「お嬢様をどのように育てて来ましたか?」と聞かれたら
この質問、なかなかの難問です。
「愛情をもって育ててまいりました」
「自主性を大切にしてまいりました」
「人への思いやりを大切に……」
もちろん、全部正解です。
でも私は、この質問で本当に見ていただきたいのは、
お子さんの“光っているところ”だけではないと思っています。
夏休みに、こんなことがありました。
小学生の生徒さんが、教室でピースの多いパズルで遊んでいました。
「これ、ちゃんと全部お片付けできるかなあ……」
と思っていたら……
案の定。
翌日、床にポツンとピースが1個。
ですよね(笑)。
次に来たとき、本人に聞きました。
「昨日、ピースが1個落ちてたよ」
すると、
「……ないことには気づいてた」
「そうなんだ。じゃあ、どうしたらよかったと思う?」
少し考えて、
「ちゃんと、ないって言えばよかった」
「そうだね」
そして私は最後に、
「このこと、お母さんにもちゃんと話してね」
と伝えました。
これは、お母様から謝罪が欲しかったからではありません。
むしろ謝罪なんて、まったく求めていません。
私が大切にしたかったのは、
本人が“言いにくいこと”を、お母さんに自分の口で話すこと。
褒められたことや嬉しかったことなら、誰だって話しやすい。
でも、
「失敗した」
「本当は気づいていた」
「でも黙っていた」
「先生に注意された」
これは、ちょっと言いにくい。
だからこそ、
「言いにくいことも、お母さんには話してほしい」
という思いで、「お母さんに話してね」と伝えました。
その日、お母様から謝罪のLINEが届きました。
いやいやいやいや。
お母様に謝っていただきたかったわけではないんです!(笑)
……まあ、私も親ならたぶん謝りますけど。
でも、そのLINEをいただいて、私はとても嬉しかったんです。
なぜなら、
あの子、本当にお母さんに話したんだ。
しかも、自分にとって都合の悪いことを。
そしてお母様は、それをきちんと受け止めて、親子で話をされた。
ここなんです。
嬉しかったこと。
褒められたこと。
成功したこと。
それを親に話すのは、それほど難しくありません。
でも、
「失敗しちゃった」
「黙ってた」
「注意された」
「もしかしたら、お母さんにも叱られるかもしれない」
そんな自分にとって不都合なことまで家で話せる。
私は、これこそ家庭の力だと思っています。
VAPの相談面接では、どうしても
「うちの子はこんなに優しいです」
「こんなに頑張れます」
「こんな素敵なところがあります」
という、お子さんの「光」の部分を探したくなります。
もちろん、それも大切です。
でも、親子関係が本当に見えるのは、
案外こういうちょっと格好の悪いエピソードだったりします。
子どもは失敗します。
黙ってしまうこともあります。
ごまかしたくなることもあります。
そのときに親がどうするか。
ここで登場するのが――
カチカチ山のうさぎです。
傷口に塩を塗り、さらに味噌まで塗る。
いや、もう十分痛いから!!(笑)
子どもが失敗したときも同じです。
「なんでそんなことしたの!」
「だからいつも言ってるでしょう!」
「あなたは本当に……!」
と、塩を塗って、味噌まで塗って、最後に火までつける必要はありません。
でも、
「それって、どうだったかな?」
と、ハッと気づかせることは必要です。
責めすぎない。
でも、なかったことにもしない。
そして、
「失敗したことを話したら、さらに傷つけられる」
ではなく、
「失敗したことでも、ちゃんと話せる」
と思える家庭であること。
これは、とても大切なことだと思います。
「お嬢様をどのように育てて来ましたか?」
この質問に、完璧な子育ての答えなんていりません。
むしろ、
失敗したとき、親子でどう向き合ってきたか。
そして、言いにくいことまで話せる関係をどう作ってきたか。
そこに、そのご家庭の子育てが一番よく表れるのではないでしょうか。
ですから、面接を控えているお母様方。
「何か立派なエピソードを探さなくちゃ!」
と焦らなくて大丈夫です。
お子さんが失敗した日のこと。
泣いた日のこと。
叱った日のこと。
言いにくいことを勇気を出して話してくれた日のこと。
そして、そのあと親子でどんな話をしたのか。
そんな何気ない日常の中に、面接で伝えられる「わが家の教育」があります。
光だけでなく、ちょっとした影も話せる。
そして、その影に塩と味噌を塗らず、一緒に光の方へ戻ってきた。
そんなエピソードがあれば、ぜひ大切にしてください。
面接は「立派な親選手権」ではありません。
いつもの親子で大丈夫。
どうか胸を張って、行ってきてください。
そしてくれぐれも――
カチカチ山のうさぎだけは、面接会場に連れて行かないように(笑)。

