合格実績を出さない理由。合格の数字だけでは見えないものがあるから。

塾のホームページやブログで、よく見かける「合格実績」。

〇〇中学校、〇〇高校、合格!

もちろん、合格は素晴らしいことです。
子どもたちが頑張った結果ですし、指導する側にとってもうれしいことです。

それでも、私は聖霊VAP以外基本的に合格実績を前面に出していません。

なぜか。

聖霊VAPは、全員合格を目指しているからです。

合格という結果だけでは、その子がどんな力を身につけ、どんな過程を経て、そこにたどり着いたのかが見えないからです。

今日は、そんなお話をしたいと思います。

聖霊VAP対策だけを目的にした指導はしていません

まず、聖霊中学校のVAP入試について。

家塾みずの坂では、VAPのリフレクション対策だけを目的とした指導はお受けしていません。

小学生のうちに、きちんと基礎学力をつけておくこと。

勉強する習慣を身につけること。

自分で考え、言葉にし、学んだことを積み重ねていくこと。

こうした土台があってこそ、入学後も伸びていけると考えているからです。

VAPで合格することだけを目標にするのではなく、合格したあとも困らない力を育てる。

それが、私の考えです。

そして全員きちんと授業や講習に出た子は、合格させます。

実際に、基礎を積み上げて入学した子たちが、入学後も上位を保って頑張っています。

中学生以降の入塾になると、事情はちょっと複雑になります

中学生になると、子どもたちの状況は本当にさまざまです。

勉強が得意な子もいれば、苦手な子もいる。

理解する力はあるのに、勉強する習慣が身についていない子もいる。

学習に大きなつまずきがあり、基礎の基礎から丁寧に積み直す必要がある子もいます。

同じ学年、同じテストを受けていても、スタート地点は決して同じではありません。

中には、境界知能と呼ばれる認知面の特性などから、一般的な指導方法ではなかなか成果につながらず、一つひとつ丁寧に教えていく必要がある子もいます。

そういう子に必要なのは、難しい問題をどんどん解かせることではありません。

わかるところまで戻ること。
理解できる方法を探すこと。
できることを一つずつ増やしていくこと。

遠回りに見えても、これが大切なのです。

テストの点数が上がった。それは本当に実力なのか?

家塾みずの坂では、定期テスト対策にも力を入れています。

テスト前には、範囲を絞り、必要な内容を繰り返し練習し、できるだけ点数につながるように指導します。

言ってみれば、テスト本番で実力以上の力を発揮できるように、できる限りの「底上げ」をするわけです。

普段はなかなか点数が取れない子でも、テスト対策によって点数が上がることがあります。

それは、それで大切な成果です。

成績上位の子は逆に底上げしないで真の実力をつけさせます。

ただし、ここで考えなければならないことがあります。

テスト対策で取れた点数と、本人が自力で使いこなせる学力は、必ずしも同じではない。

点数が上がったからといって、すべての課題が解決したわけではありません。

その子がどこまで理解しているのか。
どこに支援が必要なのか。
高校では、どのような環境なら力を発揮できるのか。

そうしたことまで考えなければ、本当の意味での進路指導にはならないと思っています。

だから、高校選びについても慎重になります。

この話は長くなりますので、また別の機会にお話ししますね。

私がいちばん驚かされるのは、「眠れる獅子」です

ここからは、長年子どもたちを見てきた私の実感です。

勉強が苦手な子にも、いろいろなタイプがあります。

その中で、私が特に驚かされるのが、能力はあるのに、勉強する気持ちに火がついていない子です。

親に反発する。
勉強しなさいと言われるほど、やる気をなくす。
学校に行けなくなってしまうこともある。
勉強なんて、どうでもいいという態度を取る。

周りの大人から見れば、なかなか手ごわい子たちです。

正直に言えば、こちらが何を言っても響かない時期もあります。

ところが、こういう子の中には、いったんスイッチが入ると驚くほど伸びる子がいるのです。

私は、そんな子たちを「眠れる獅子」だと思っています。

以前、夏休み前に「通分って何ですか?」「約分って何ですか?」と聞いていた子がいました。

勉強への意欲が続かず、いったん塾を辞めた子です。

その後、有名な進学塾に通いましたが、本人に合う指導を受けられなかったようで、再び戻ってきました。

その子が、ある高校に入りたいと言い出したのです。

そこで私は条件を出しました。

「その高校に入りたいなら、祝日以外は毎日ね」

すると、本当に毎日来るようになりました。

そして、勉強への取り組みが見違えるほど変わったのです。

あれだけ勉強に気持ちが向かなかった子が、目標を持った途端に、自分から机に向かう。

もちろん、毎日通えば誰でも成績が上がる、という単純な話ではありません。

でも、本人の中にある力と、目標と、取り組む環境がかみ合ったとき、子どもはここまで変わるのか。

長年指導していても、そう感じる瞬間があります。

今までの成績が下のほうだった子が、少しずつ順位を上げ、学年の真ん中あたりまで伸びていく。

これは、決して珍しい夢物語ではありません。

ただし、そこには本人の力だけでなく、本人が動き出すタイミングや、適切な支援、継続できる環境が必要です。

だからこそ、同じ「成績が悪い子」として扱いたくない

ここが、私の伝えたいところです。

勉強する力がないのではなく、勉強する気持ちが育っていない子。

理解することそのものに時間がかかり、学び方から工夫する必要がある子。

基礎学力が不足している子。

同じように点数が低く見えても、その背景はまったく違います。

もちろん、実際にはいくつもの要因が重なっていることもあります。外から見ただけで、その子の可能性を簡単に決めつけることはできません。

それでも、長年子どもたちを見てきた経験から、私はこの違いを大切にしています。

必要な指導も、かける時間も、伸びていく道筋も違うからです。

そして、ここで合格実績の話に戻ります。

こうした「眠れる獅子」が、ある日突然、本気になって大きく成績を伸ばす。

塾にとっては、とてもわかりやすい成功事例です。

「偏差値がこれだけ上がりました」
「この成績から、〇〇高校に合格しました」

宣伝材料としては、申し分ないでしょう。

けれど、その子の変化だけを切り取って、塾全体の指導力を示す数字にしてしまってよいのだろうか。

私は、そこに少し違和感があります。

その子が伸びた背景には、もともと持っていた力、本人の決意、目標との出会い、そして環境との相性など、さまざまな要素があります。

一方で、時間をかけて基礎を積み上げている子もいます。

小さな「できた」を一つずつ増やしている子もいます。

周囲と同じペースでは進めなくても、自分なりに前に進んでいる子もいます。

私は、そういう子たちの努力も、同じように大切にしたいのです。

合格実績を出さないのは、合格を大切にしていないからではありません

誤解していただきたくないのですが、私は合格を喜ばないわけではありません。

子どもたちが目標を達成したときは、本当にうれしいです。

そのために努力したことも、壁を乗り越えたことも、よくわかっています。

ただ、合格という一つの結果だけで、子どもの力を測りたくない。

そして、合格した子の実績だけを取り上げて、塾の価値を伝えたくないのです。

家塾みずの坂が大切にしているのは、入試の結果だけではありません。

基礎から学び直すこと。
自分に合った学び方を見つけること。
勉強する習慣をつくること。
自分の力で考えられるようになること。
そして、自分の可能性に気づくこと。

そうした積み重ねの先に、合格があるのだと思っています。

合格実績を並べるよりも、その子が入学したあとも、自分の力で学び続けられること。

私は、そちらを大切にしたい。

だから、家塾みずの坂では、合格という結果だけを切り取った宣伝はしません。

目立つ実績があっても、それだけを売りにすることはしない。

一人ひとり違う子どもたちが、それぞれの場所で頑張っていけるように。

これからも、目の前の子どもたちと向き合っていきたいと思っています。

みんな、頑張れ。

先生は、ちゃんと見ていますよ。